目次
〈自然派ワインに恋して〉
シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。
ナビゲーター

岡本のぞみ
ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。
コンセプトは鳥焼肉と自然派ワイン

おいしいもの好きな人には、この世に“鳥焼肉”というジャンルがあることをぜひとも知っていただきたい。なぜなら、鳥焼肉は焼鳥のおいしさと焼肉の楽しさの両方を満喫できるから。さらにはその鳥焼肉を自然派ワインとともに味わえるのが、祐天寺にある「Cotori」。肉のショーケースやロースターテーブルはあるが、カフェのような温もりのある店内も心地よい。

店主の小島 睦さんは飲食業界に長く身を置き、独立を視野にどんなジャンルの店がいいかを考え始めていた。その頃、鳥焼鳥の先駆けである恵比寿「焼肉鳥gg」に入社。店の立ち上げにも携わり、3年間働いている中で、鳥焼肉に可能性を感じたという。そこで、ggの社長に“鳥焼肉”で自分も店を持ちたいと相談したところ、快く送り出してもらえ、2020年にCotoriをオープンした。

小島さんは鳥焼肉をCotori流に進化させるべく、焼き目はつくが焦げつかないロースターを採用。誰が焼いても鳥肉のジューシーなおいしさが味わえるようになった。「鳥焼肉の盛り合わせ」を頼むと、銘柄鶏と地鶏の食べ比べもできる。
さらにドリンクはヘルシーな鳥肉に合う自然派ワインが充実。小島さんがたくさんの種類を試飲し、厳選したものが用意されている。
白レバーのキャラメリゼ✕ロゼワイン

鳥焼肉を始める前に、前菜として鳥のおいしさを味わいたい人におすすめなのが「低温調理 白レバーのキャラメリゼ」。低温調理した白レバーをバーナーであぶってキャラメリゼし、バルサミコソースをかけたもの。ナッツやドライフルーツがトッピングされている。「ロッシーニ風のフォアグラからヒントを得ておつまみにしました。とろける味わいが楽しめます」と小島さん。

白レバーのキャラメリゼに合わせたいのは、ドイツのロゼワイン。「ピノ・ノワールを使った果実みが豊かなロゼワインで、白レバーの脂とバルサミコソースの甘みや酸味を引き立ててくれます。前菜なので、どっしりした赤ワインではなく、軽やかなロゼワインがおすすめです」と小島さん。ロゼワインは軽快に食事を始めるのにもぴったりだった。
鳥焼肉の盛り合わせ✕にごりオレンジワイン

いよいよ鳥焼肉のスタート!「鳥焼肉8種の盛り合わせ」にはさまざまな銘柄の鳥肉や部位が食べ比べられるようになっている。この日は比内地鶏もも、天草大王の首皮と砂肝、せせり、美桜鶏レバーとむね、さつま純然鶏もも。はかた一番どりハラミ、匠の大山鶏ヤゲンなんこつなどが並んでいた。盛り合わせを頼むと、写真のようにサービスがついてくる。

いよいよ初体験の鳥焼肉。トングを使って焼いていくと、ロースターの構造により、焼鳥の一流の焼き手がこだわる“遠火の強火”が実現されている。それでいて網が焦げないため、誰でもうまく焼けるのだ。食べてみると、パサパサしがちなむね肉もみずみずしいばかりのジューシーな味わいに感動。しっかりと弾力のあるモモもジューシーで、食べ比べると銘柄によって食感が違うのも楽しめた。


鳥焼肉に合わせたが、日本のオレンジワイン。「鳥焼肉は正肉もあれば内臓もあって、オールマイティに合わせられるのがオレンジワイン。キヨワインズのオレンジワインはデラウェアから造られていて、適度に香りや甘み、タンニンの苦みもあって、淡白な鳥肉を食べるのにおすすめです」と小島さん。にごりのあるネクターのような質感もジューシーな鳥肉を引き立てていた。
薬膳鶏黒湯✕だし系赤ワイン


Cotoriでは〆が豊富に用意されているが、その中で目を引くのが「薬膳鶏黒湯」。台湾の四物湯(しもつとう)という黒い薬膳スープから着想を得て、鶏で出汁をとったスープに薬膳をたっぷり入れ、醤油などで味付けされたもの。あっさりした味ながらクコの実やナツメなどの薬膳の風味が香り、滋味深さが感じられる。お腹を満たしたいときは雑穀ごはんやフォー入りも注文できる。

〆にもワインを飲みたいという人におすすめなのが、オーストリアのコピッツという生産者の赤ワイン。「スープの味にも共通する醤油や出汁を感じる、ほどよくボディのある赤ワインです。スープの味に寄り添いつつ、酸味や渋みがプラスされる組み合わせです」と小島さん。最後は赤ワインの味わいで余韻に浸りたいという思いにも応えてくれる提案だ。
小島さんの「私が恋した自然派ワイン」

小島さんの恋した自然派ワインは、直接、仕入れに同行したときに出会った思い出の一本。
「親しくしているアフリカンブラザーズというインポーターの方と2022年に南アフリカの生産者を訪ねました。新しく取り引きするワイナリーへも同行し、そのときに出会ったのがこのダニエル・コロンボ・ワインズです。飲んでみると衝撃的においしくて『絶対に入れてくれ』とお願いしたほど。満場一致でしたね。
元々、アルザスのゲヴュルツトラミネールなど華やかなオレンジワインが好きなのですが、それを超えたと思わせる味。加えて樽の使い方も絶妙で、とにかく思い入れのある一本です。初めて輸入された2021年のワインには特別な思いがあります」
鳥肉に合うワインを中心にラインアップ

Cotoriでは鳥肉に合うワインを中心にヨーロッパをはじめとしたさまざまな国のワインが揃っている。鳥焼肉には食中酒としてオレンジワインやロゼワインをすすめられていて、グラスワインにも必ず両方が黒板メニューになっている。そのほか自然派ワイン好きな人個性的なワインも用意されている。「初めて自然派ワインを飲む人も個性がある自然派ワインが好きな人も合わせられるように、いろんな種類を産地・ぶどうの種類にこだわらず揃えています」と小島さん。グラスワイン10種類以上(1,000〜1,500円)、ボトルワイン60種類(5,500〜15,000円)から選べるようになっている。
遅い時間帯はワインバー使いもOK

Cotoriは鳥焼肉で楽しむのが王道だが、遅い時間帯はワインバーとしても利用可能。「白レバーのキャラメリゼ」のような前菜と合わせるのはもちろん「LAMMASさんの美味しいチーズ」や「酒肴盛りあわせ」などのメニューもある。これからの季節はテラス席もおすすめ。また、ワインショップとして自然派ワインを購入することもできる。
Cotoriで自然派ワインを鳥焼肉で楽しむもよし、おつまみとともに楽しむもよし、ショップとして利用するもよし。好みの使い方で訪れてみよう。
※価格は税込