未来の料理と大人の洋食的フレンチ、虎ノ門横丁の楽しいイタリアン

独創的で、ちゃんとおいしい

5月2日、東京駅と日本橋駅の間、八重洲にイノヴェーティブキッチン「8go(エゴ)」がオープンしました。「nol」の野田達也シェフがプロデュースで、カフェのようなカジュアルな店内ながら、繰り出される料理はまさに革新的。

食材からソース、デザートに至るまで、これからの食の在り方を提示するような料理のオンパレードですが、今年27歳のIbukiシェフのセンスがいいので、どのお皿もおいしく着地しています。グルテンフリー、ヴィーガン料理も充実。丸の内周辺の健康志向が高い層に「発見」されて混む前に、訪れたほうがいいでしょう。

隣には昨年11月にオープンし、飲食店関係者の話題を呼んだ「Gastronomy Innovation Campus Tokyo」が併設されています。

ぼくの食べ歩き日記
椎茸の一口グラタン   出典:ぼくの食べ歩き日記さん

溜池山王にオープンした大人の洋食店

4月16日、溜池山王に大人の洋食店と呼びたくなるようなビストロ「arrosoir」がオープンしました。銀座に移転した「アマラントス」の場所で、姉妹店です。新開才也シェフは「代官山小川軒」で修業後、日本のイノヴェーティブレストランの走りともいうべき赤坂の「アロニア・ド・タカザワ」に。吉祥寺「ビストロ ハッチ」を経て「プルミエ レタージュ」でシェフになりました。ですから、西荻窪「オステリア トレ パッツィ」の松原兄弟や「ビストロH」廣瀬康二シェフと共に仕事をした関係になります。

8,500円のプリフィクスコースのみですが、選択肢が多くアラカルトのような感覚。付け合わせでパン粉を使った塩味の調味料が出て、好きに料理にかけられます。さらにメインには土鍋ご飯も用意されていて、昆布締めした猪のローストにぴったり。締めのナポリタン(+800円)まで堪能してしまいました。BGMは70年代の日本のシティポップで、大人が喜ぶ世界観が確立されています。好きな人にはたまらないでしょう。

猪のロティ ソースピカンテ

あの良店が、味と雰囲気そのままで虎ノ門に

虎ノ門横丁のプロデューサーでもあるマッキー牧元さんから「いいお店が入ったよ」と教えてもらったのが、4月18日に横丁にオープンしたイタリアン「FLAMINGO TORAnoMON」です。恵比寿「フラミンゴ」を屈指の人気店に育てた岡田一歩さんが、こちらでもサービスを担当。その高いコミュニケーション力で、活気あふれる店内を作り上げています。

平日は15時、土曜は14時、日曜は13時からオープンしていて、グラスワインがなんと30種。自家製アリッサのペンネや特製チキンなどナチュラルワインが進むメニューも揃っていて、早い時間から至福の時間を過ごせます。

自家製ソーセージ

母娘が復活させた名店と、吉野家公認の丼が食べられる居酒屋

惜しまれつつ閉店も、妻と愛娘の手で復活

実は1週間に2度も訪れてしまったのが小料理店「南麻布 あら㐂」です。2000年に荒木孝夫さんが創業。そのおいしさと人柄で多くの著名人にも愛された名店でしたが、昨年夏に急逝。惜しまれつつ閉店したものの3月10日、今年まだ26歳という、娘のかれんさんが厨房に立ち、復活したのです。幼少期より父に連れられて築地に通っていたというだけあり、筋の良さはかつての常連も驚くほど。

「呑兵衛に愛される店にしたいです」と語ってくれましたが、甘海老の酒盗和え、うどのきんぴら、くりから焼きなど、まさに酒を呼ぶ味で、アジフライの上質な身色はうっとりするほど。サービスを担当するお母様のかすみさんはさすがの接客ぶりで、日本酒はきちんと正一合。厨房の奥ではお祖父様が見守り、なんともいい雰囲気。飲食店は人なんだと、つくづく実感しました。そして孝夫さんの頃からの名物である、350gの岩中豚のとんかつは外せません。食べきれなければ持ち帰りも可なのですが、きれいな味で2人でぺろりと。最強の酒肴でした。

岩中豚 とんかつ

吉野家公認「右京丼」

その「あら㐂」さんを教えてくれた「十番右京」「歌京」などの大ヒット店を持つ岡田右京さんの新店が、5月1日にオープンした麻布十番の「百彩右京」です。

「十番右京ナチュールスタンド」がリニューアルして、人気メニューが充実した居酒屋に。最大のウリは「右京丼」の登場でしょう。吉野家の豚丼に牛皿を加えて食べるという、右京さんの“発明”がSNSで話題となり、なんと吉野家の公式ガイドブックにも掲載されました。そのオマージュメニューなのですが、お茶碗サイズなのでお腹がいっぱいでも大丈夫。ぜひオーダーしてみてください。

右京丼

創作系讃岐うどんのオープンと人気博多うどん店の東京初進出

人気讃岐うどん店の新しい試み

5月9日、渋谷にオープンしたのが「香川一福ART(アール)」。「Fry家」などを経営し、「香川 一福」をフランチャイズ展開する(株)StyLeの新店で、讃岐系の創作うどんです。

既存店と違う試みは麺。偶数の日は太麺、奇数の日は細麺だけのメニューになります。偶数日だったので、太麺にしかない「カルボナーラうどん」をオーダー。味変用に黒胡椒と出汁が付いてきます。混ぜると隠れていた黄身が現れ黄金色に。バター、チーズ、黒胡椒と特有の伸びる麺が絡まり夢中になる味でした。奇数の日だけの「生姜焼きぶっかけ」という、とても気になるメニューもあったので、思わず再訪。冷たく喉ごしのいい細麺と、熱々でやわらかな生姜焼き、さらにカイワレ大根、卵黄、天かす、かつお節などのうまみが加わり、こちらも大満足の一杯でした。

カルボナーラうどん
カルボナーラうどん   写真:お店から

またまた、福岡の有名うどんが東京に

4月21日、東急プラザ原宿「ハラカド」の5階には「因幡(いなば)うどん」がオープンしました。「資(すけ)さんうどん」に続き福岡の有名店が東京に進出です。

博多うどんの特徴は軟らかいうどんと出汁、そしてごぼ天などの揚げ物。麺がスープを吸ってふやけていくのがたまらなくおいしいんです。因幡うどん特有の穏やかな出汁も、かき揚げのようなごぼ天の油が溶けてコクが増します。実は2015年に博多うどんのおいしさを伝えるべく『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか』(サカキシンイチロウ著/ぴあ)という本を編集した経験があります。その立場からすると、ぜひ次は「のうどん」に出てきてほしいと願っています。

モダンごぼう天うどん